CASE STUDY

清水建設株式会社 様

建設業界の枠を超えた、未来への挑戦

清水建設株式会社 様

2024年 東京潮見の約3万2200㎡という広大な敷地に、5つの施設を備えた清水建設の新たなイノベーション拠点となる「温故創新の森 NOVARE(ノヴァーレ)」が誕生しました。今回は、その中で拠点のコアとなる「NOVARE Hub(ノヴァーレ ハブ)」のDiscoverエリアにOblong社のMezzanine、さらにDefineエリアにT1V社のThinkHubを導入していただきました。NOVAREへの想いや今後の課題など、常に挑戦を続けるお2人にお話しを伺いました。

 


清水建設NOVARE DXエバンジェリスト 及川 洋光様(右)
清水建設 NOVARE コンダクター    濱田 淳司様(左)

 

新たなイノベーションを生み出す拠点として

清水建設グループは、長期ビジョン「SHIMZ VISION 2030」として時代を先取りする価値を創造する「スマートイノベーションカンパニー」を掲げています。さらに、未来を予測することが難しい現代においても、常に原点に立ち返り、変化する社会を見つめ直し、未来に挑戦していくことが大切であると考えています。

「従来の建設業の枠に捉われず、オープンなマインドで新しい未来を作り上げていく」

「時代の求める技術を育て、変化に負けない人を育てていく」

これらのビジョンを実現していくためには、これまでにないイノベーションが必要であり、そして、社内だけではなく多様なパートナーとの共創も欠かせません。こうした課題に対して、オープンイノベーションによる未来社会の共創を目指す場所として生まれたのが「温故創新の森 NOVARE(ノヴァーレ)」です。

 

コンセプトは、「温故創新の森(Smart Innovation Ecosystem)」

モノづくりの原点に立ち返りつつ、伝統を大切にしながら進取の精神を育成するというコンセプトで名付けられました。「温故創新」は、故事の温故知新を基に、より新たなものを創出する意図を込めています。さらに「森」はこれらを単独で行うのではなく、生態系(エコシステム)として複数の技術や部門、企業、また施設が連携しながら実現していくことを示しています。

 


全5施設がそれぞれ自立し、連携し合うことがエコシステムの象徴

 

魅力的な5つの施設

・NOVARE Hub(ノヴァーレ ハブ) – イノベーションを推進する情報発信と交流の拠点

・NOVARE Lab(技術研究潮見ラボ) – 生産革新を担う研究施設

・NOVARE Academy(ものづくり至誠塾) – 体験型の研究施設

・NOVARE Archives – 清水建設の歴史資料館

・旧渋沢邸 – 二代清水喜助の作品

NOVARE(ノヴァーレ)は、ラテン語で「創作する・新しくする」という意味を持つ名称で、“オープンな枠組みの中で新たな価値創出を進めていくこと”を表わしています。そして、清水建設ではイノベーションのプロセスを4つの段階(Discover、Define、Refine、Scale)を繰り返し行うことだと考えています。

 


清水建設が考える、4つのイノベーションプロセスDDRS

 

1つ目の「Discover(ディスカバー)」で課題を発見し、

2つ目の「Define(ディファイン)」で仮設を立て、

3つ目の「Refine(リファイン)」で検証を実践し、

4つ目の「Scale(スケール)」での社会実装を経て、また新たなDiscoverに繋げる。

これにより、単なる複合施設ではなく、新たなイノベーションを生み出す拠点として機能しています。このDDRSのイノベーションプロセスが反映された空間が、「NOVARE Hub(ノヴァーレ ハブ)」です。

 

過去の情報、さらには未来の情報から課題発見へと導く

「温故創新の森 NOVARE」の軸は、“共創”かつ“イノベーション”。
この2軸をもとに、既に世の中で普及しているものではなく、これまでに前例がない、我々のニーズに合致するデバイスを探していました。

 


我々のニーズに合致するだけではなく、
これからの挑戦に必要不可欠なデバイスであると感じ、今回の導入に至りました。(及川様)

 

NOVARE Hub(ノヴァーレ ハブ)のDiscoverエリアは、「課題発見」を行う場所です。そのために視覚的な情報量を増やす必要がありました。従来のモニターやプロジェクターでは、複数の情報を同時に表示するのが難しいため、縦3画面+横3画面という特殊な構成でOblong社のMezzanineを導入しました。

 


Mezzanineアプリを使えば、10人まで同時に資料の表示ができる

 

従来は複数の人から資料を出す際に、HDMIケーブルを切り替えて表示していました。しかし、MezzanineであれはHDMI入力が複数あるので、他者の資料はそのままに、新しい人の資料も表示できる。資料の切り替え待ちで時間を無駄にする事が無くなり、プレゼンテーションや資料の比較がスムーズに行える点が素晴らしいです。

既存の資料を同時に見比べることも大切ですが、より効果的な課題発見のためには新たな資料の活用も重要です。プレゼンテーションで使用される資料は、内容に合わせて次々とページが進みます。3枚先に進むと、3枚前の内容は覚えていない、そして思い出せない事が多いです。しかし、Mezzanineは過去の情報、さらにはこれから先の未来の情報、どちらも同時に見比べられる。さらに、大事なページやキーワードは、スクリーンショット機能で瞬時に残し、後から共有できます。これこそが、我々の求める課題発見のためのニーズと合致していました。

 

 
WAND(魔法の杖)を使った直感的なユーザーインターフェースが特徴のMezzanine

 

通常はマウスを使ってコンテンツを動かしたり、大きさを変えたりしていますが、MezzanineではWAND(魔法の杖)を左右、さらには押す/引くという自由自在な動作でコンテンツの大きさが変化し、それらがスムーズにディスプレイに追従します。直感的なWANDの操作はプレゼンテーションでのパフォーマンスのひとつになります。

また、3面あるディスプレイには、32:9や48:9といったパノラマのようなコンテンツの表示が可能になりました。コンテンツとしての迫力や、直感的な操作による躍動感のあるパフォーマンスが実現するため、課題発見のための部屋としてだけではなく、NOVAREに来てくださるVIPのお客様をあえてDiscover Roomにご案内しています。彼らに感動と驚きを提供できる点もとても素晴らしいです。

 

デジタルとアナログの融合

 

 
大事な情報をコルクボードにピンナップするように、自由に切り取り配置できる(左)
ホワイトボードとの利用イメージ(右)

 

ここでは、デバイスは多くの資料を表示し、「情報のインプット」が主な目的になります。そのインプットに対して、フレームワークを使って如何にアウトプットをまとめていくか、あるいは次の仮説に繋げていくのかが重要になっていきます。これらのアイディアを口頭でするだけではなく、フレームワークやポンチ絵をあえて手書きでまとめていく事で思考が整理されていきます。そのため、Mezzanineを設置しているDiscover Roomの壁は360度がホワイトボードになっています。従来のポストイットのように、アイディアを紙に書き出して、ホワイトボードに貼りだし、ディスカッションに応じて紙を移動させながら方向性を固めていくのです。あらゆる課題を発見するためには、デジタルとアナログの良い部分を組み合わせることで、課題発見や有意義なディスカッションに役立っています。

 

Discoverエリアをハブとした、より効果的な活用のために

一方で、社内に限らずMezzanineの利用率や良さをもっと普及させるには、多くの人が「利用シーン」をイメージできる必要があると思います。

“魔法の杖”でコンテンツが動くだけでは「すごい!」という印象で終わってしまいます。しかし、それらの機能が「具体的にどのように活用できるか」というイメージを共有していくことで、自然とユーザーの利用率は高まっていくと思います。また、社外の人ともそれぞれのアイディアを出し合いイノベーションを起こしていくことで、Discover Roomのコンセプトである「社会課題の発見」を実現することができる。我々だけでは見つけられなかった、新たな”Discover”に繋がる。今後のアイディアとして、このDiscoverエリアをハブとしてMezzanineを導入した国内外のユーザーとの交流会を実施しても面白いのではないでしょうか。

 

仮説立案のためのインタラクティブな情報共有


オンライン/オフラインでの共同作業の可能性を高めていくThinkHub

 

Defineエリアは、「仮説の立案」をする場所です。そのため、外部からも人々が訪れて打ち合わせが行われます。しかし、常に訪問してもらうことは難しく、さらに導入当時はコロナ禍という事もあり、オンラインでの打ち合わせが当たり前でした。打ち合わせ内容によってはオンライン(Zoom/Teams)上だと、スムーズなコミュニケーションが取りづらく、インタラクティブな情報共有ができないという課題がありました。

今回導入したThinkHubであれば、オンラインで参加しながらも、まるで同室にいるように同じような情報共有ができる、さらにアイディアをその場で投影し、書き込みが可能。

今まで抱えていたオンラインでのコミュニケーションにおけるストレスが軽減しました。

 


Defineの「場」にいる人が、ThinkHub上に表示される多数のコンテンツを自由に操作し書き込みをする、
それらをリモートの人たちにはZoomやTeamsを繋いでオンライン上で共有する、
これだけでも従来に比べると意味があると思います。(濱田様)

 

一方でまだ課題もあります。基本的な使い方についての社内勉強会は実施されたものの、T1Vの利用シーンや具体的な活用法についての議論が不足しています。また、T1Vアプリの活用がまだ積極的に行われていない事もあり、社内外の利用促進にはさらなる体験会やレクチャーが必要です。

 

MezzanineとThinkHubが切り開く、NOVAREでのオープンイノベーションな未来

冒頭でもお伝えしましたが、NOVAREのコンセプトは、共創・オープンイノベーション。

アメリカやヨーロッパではプロジェクトベースでの考え方が当たり前となっていて、グローバルで情報共有できる社内ツールもあります。誰かが何かを発信したら、世界中のさまざまなバックグラウンドを持つ人々からの意見やアイディアが瞬時に集まり、自然とプロジェクトチームが形成されます。

しかし、現代の日本においては、縦社会の企業文化が根強く残っています。新しい事を始めるためには、長い稟議のプロセスを経る必要があります。

海外のように、ひとつの企業の中で縦の組織としての上司の他に、横の組織(各プロジェクト)のリーダーがいて、その人にも決定権がある。そういった、縦だけではなく横との「組織連携」を可能にするには、物理的に離れた人とのコミュニケーションが必要です。それらが当たり前にできるデバイスが、MezzanineでありThinkHubであると思います。

「新たなアイディアとして、こんな事をやりたい!」と社内で思った時に、従来は自分たちだけで考えがちでした。しかし、NOVARE Hubの「オープンイノベーション」な場からデジタルを駆使して、世界中にアイディアを求めることが自由にできるようにしていきたいと考えています。MezzanineやThinkHubがコミュニケーションのハブとなり、社外とも気軽にコミュニケーションが取れる。そういった、オープンイノベーションの場がNOVAREになれば、と強く願っています。

NOVAREは、オープンして1年ほどです。まだまだ我々のチャレンジは続いています。


及川 洋光

清水建設株式会社 NOVARE DXエバンジェリスト

航空会社のシステムエンジニアを経て、製造業向けソリューションのプロジェクトマネージャー、コンサルタントなどを歴任。2021年清水建設に入社後は、DX推進部 部長としてデジタルツインなど各種プロジェクトに携わり、2023年9月より現職。

 

濱田 淳司

清水建設株式会社 NOVARE プロモーションユニット コンダクター

通信会社のシステムエンジニアとして、社内業務システムの開発を担当。2019年清水建設に入社後は、デジタル戦略推進室で社内業務用デジタルインフラの導入・展開に携わり、2023年9月より現職。


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